人は誰しも、自分だけの物語を生きています。その“生きざま”を、写真でそっとすくい取りました。
写真クラブを運営するうちに、あるメンバーのお母様の遺影写真を撮らせていただく機会を得ました。ご自宅におじゃまして話をお聞きすると、様々な思い出が溢れてきて、そういったものを詰め込んだ写真が撮りたいと、何日かトライしてやっと満足のいく写真ができました。お届けに上がった時のお母様の嬉しそうなお顔が忘れられず、いまでも続けています。
私自身、還暦を過ぎたと言っても若造です。やっと人生ってなんだろうということが分かりかけてきたところです。
太陽は沈む寸前に夕日となって美しく輝きます。まさに人の晩年がこれにあたります。さまざまな経験を経て、喜びや悲しみが刻み込まれた今のお顔が最も美しいと思います。
残りの人生で、今日のあなたが一番若いのです。太陽が沈んでしまう前に、ご家族の思い出の一枚として残しておかれると良いでしょう。
心を込めてお手伝いさせていただきます。
この作品は、お母様の「大好きな庭の木の下で、可愛がっている山羊と一緒に写りたい。」という願いにお応えしたものです。高さ10メートルはあろうかという大木でしたので、超広角レンズを使って地面すれすれのローアングルで撮りました。
私はスタジオを持っていないので、出張撮影となります。お客様が気に入った場所でお望みの演出で、その方の人生の片鱗を感じることができる写真を撮っています。「遺影写真」ではなんだか辛気臭いので「思いポートレート」と呼んでいます。
このジャンルはナショナルジオグラフィックの撮影マニュアルでは「環境ポートレート」と分類されています。自分の人生が投影された一枚を求める方が増えています。